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「よみうりランド 丘の湯」になぜ人が集まるのか?

先日、「よみうりランド 丘の湯」へ行ってきました。家庭への風呂設備の普及で需要は減少、温浴施設は「温泉地」といった強みを持つ施設以外はシュリンクしていく市場なのかと思っていましたが、あまりの人の多さに驚きました。

洗い場は25箇所あるので男女両方で洗い場のMAXキャパシティは50人ですが、浴場へ同人数が入っているとすると、100人は浴場又は洗い場にいました。60分で回転すると仮定すると、1時間に100人。17時でこの状態でしたのでピーク時は120人程入っているのではないでしょうか。

朝10時から24時まで営業として、ピーク時に120人、朝開店後は30人、昼頃に50人、夕方にかけて80人、100人とすると、ざっと900人の入浴者がいた計算です。

平日は1/3の入浴者とすると月に13,200人の入浴者がいるのではないでしょうか。入浴単価を700円と仮定すると月に924万円の収入です。

実際にはマッサージや食堂の運営、ドリンク販売、タオル等の貸出オプションもあるので1000万円以上の売上はありそうです。

なぜこれ程の人が来るのでしょうか?
3つの理由が考えられます。
よみうりランドへ来場者からの「ついで」客
バスで丘の湯へ向かいましたが、バスは満員状態。40人が乗車し、1時間に6台運行している場合、1時間で240人。10時間で2400人。7割がよみうりランドへ行くとすると(よみうりランドで下車する人がほとんどであった。時間帯でバラつくと思うので7割と仮定。)、1680人がバス経由でよみうりランドに来場していた計算です。自家用車でバスの3割が来場するなら2184人の来場があった計算です。3割だけ丘の湯へ入浴にくるなら 約650人の「ついで」客を取り込めます。

②KIDKIDへの来場者からの「ついで」客
丘の湯はファミリー層の入浴者が多かったです。幼児が遊べる施設KIDKIDへ来場した人が一定割合「ついで」しているでしょう。KIDKIDの下駄箱数がMAX70個、ピーク時3時間は70人が来場し(1時間で1回転)、それ以外5時間は40人とすると、昨日だけで410人の来場です。3割だけ「ついで」なら120人です。

③リラクゼーション目的
丘の湯へリラクゼーション目的で来場する客です。メインはファミリー層でしたが(ほとんどは「ついで」客と想定)、シニア単独客が一定数いましたので、リラクゼーション目的で丘の湯目当てで来ています。

これだけの来場者がくる丘の湯は安泰でしょうか?

まず温浴施設市場自体が成熟市場となっている中、競争が激化していると考えられます。差別化できるポイントを見いださないと他の温浴施設へ客を取られます。

消費者の志向の変化にも注意が必要です。衛生意識の高まりから、温浴施設への来場を敬遠する動きがあり得ます。

また、共働き世帯が増え世帯収入が増えることで、他のレジャー(温泉旅行、海外旅行、キャンプ等)への代替圧力が強まるでしょう。

また、共働き世帯が増えることで都心に世帯を持つ家庭が増え、沿線住民が減少、来場者の減少リスクもあります。

推定では、よみうりランドからの「ついで」客が多いですが、よみうりランドへの来場者が減少すると丘の湯への来場者も減少します。2011年には年間100万人、2016年には190万人と来場者数を伸ばしているよみうりランドですが、「イルミネーション」「グッジョバ!」にかわる目玉ができるかが鍵になるのではないでしょうか。

丘の湯の客数を増やすにはどうしたらよいでしょうか?
丘の湯にまつわるバリューチェーン
①遊ぶ、運動する(よみうりランド、KIDKIDなど)
②入浴する
③食事する
④食後の時間を潰す
と考えられます。

①について、よみうりランドの「ついで」客だけでなく、地域の学校行事の「ついで」(運動会、部活動、社会見学など)や地域スポーツの「ついで」(草野球、マラソン大会、ゲートボールなど)を取り込むためのマーケティング施策を行ってはどうでしょうか。行事の「ついで」利用からプライベートでの利用へつなげることができます。

また、①について食事施設(丘の湯プラザ)を強化してはどうでしょうか。食事施設は商品ラインナップが乏しく、必ずしも魅力的ではありませんでした。既存の食事施設を強化することで、食事の「ついで」客を作ります。

④について強化する余地があると感じました。入浴後は丘の湯内にある「麒麟」にて食事ができますが、食後の時間潰しをする施設がありません。食後の時間潰しができる施設があればリラクゼーション効果が上がり、温浴施設としての価値が上がるのではないでしょうか。喫茶店の併設、マンガ喫茶の併設、動画視聴コーナーの設置などが考えられます。

ドトールは売上を回復させるために何をすべきか?

ドトールの各月売上が減少しています。
月によって減少率は異なりますが、前年同期比約2%程度ずつ減少しています。

なぜ売上が減少しているのでしょうか?
ドトールの売上の因子は①単価、②1店舗1日当たり来店者数、③店舗数、④営業日です。

来店者が注文するのはコーヒー単品か、フードとのセットと考えられ、①がコンスタントに下落するほど消費者行動に変化は無いでしょう。また、店舗改装に伴い営業日数が減少することはありますが、全国的に毎月2%程のインパクトがある大規模改修は行われていないように思います。店舗を毎月閉鎖しているとも思えません。客足が遠のいたことが売上の減少を引き起こしていると考えられます。

なぜ客数が減少したのでしょうか?
3つ考えられます。
コンビニコーヒーの普及
セブンカフェなどコンビニコーヒーが普及した結果、客をとられた可能性があります。店舗内にイートインコーナーが設置されている店舗が増えてきています。駅前出店の多いドトールから、同じような出店を行い、より安価に提供しているコンビニコーヒーへ客をとられた可能性があります。一方で元々コンビニで缶コーヒーが販売されていましたから、コンビニで缶コーヒーを購入する数が減りコンビニコーヒーを購入する人が増えただけかもしれません。そう考えるとインパクトは小さいとも考えられます。(むしろ喫茶店需要を増やす補完材的役割を果たしているかもしれません。)

スターバックスタリーズなど他店への流出
スターバックスはオシャレなブランドイメージやフラペチーノといったオリジナルメニューで女性客を中心に受け入れられていると考えられます。
タリーズも女性に受け入れられやすいドリンクが多いですし、パスタ、フレンチトーストなどのフードメニューが充実しているため顧客の取り込みと単価の増加を実現しているのではないでしょうか。
一方でドトールのドリンクはブロンドシャコラ・ラテや豆乳ラテなどはあるものの全体的にオーソドックスなラインナップです。また味はしっかりしているものの、フードメニューはバラエティに乏しい。「安くて品質のよいコーヒー」をコンセプトに提供してきましたが、競合のサービス拡充の中でチープなイメージの喫茶店となってしまっているのかもしれません。

③サードウェーブの普及
コメダ珈琲など高級志向のサードウェーブ店が普及した結果、客数を減らしています。コンビニコーヒーの普及でコーヒーの裾野が広がった上、可処分所得が増加した結果、価格センシティビティが下がり、高級志向が進んでいます。こうしたサードウェーブ店は広い店内とラグジュアリーな空間を作るため、駅前出店は難しく、ドトールと競争が発生しにくいように思えますが、「中高年女性の団体客」がサードウェーブへ流れていってしまったのではないでしょうか。実際、ドトールは1人客が9割、2~3名の団体客が1割といった印象です。安価で親しみやすいドトールへ来店していた団体客が、ランチ時間帯~アフタヌーンティーの時間帯にかけてサードウェーブ店へ流れていってしまったと考えられます。

ドトールは売上を増加させるために何をすべきでしょうか?
①新メニューの開発
春夏秋冬の4シーズンで新メニューを投入しているかと思いますが、スターバックスでは1~2ヵ月で新メニューを投入しています。飲食業のライフサイクルは2~3年と言われ、新メニュー開発、新キャンペーンにより顧客を飽きさせない工夫が必要です。価格優位性が失われた結果、「浮動層」が増加しているため新メニュー開発による浮動層の取り込みが必要ではないでしょうか。
新メニュー開発はマクドナルドが参考になります。マクドナルドでは、「超グラコロと濃グラコロ」、「チーチーダブチとチーチーてりやき」と言ったように食べ比べを狙った新メニューを開発しています。ミラノサンドといった食べ比べができるメニューが限られているため、食べ比べ・飲み比べができるメニューを投入することで、浮動層を取り込みます。

②他ブランドとの共同企画
スターバックスと比較するとチープなイメージは拭えません。一方で安易な高級路線はすべきではないと思います。ドトールの強みは安くて便利な立地、親しみやすいといった点です。既に行っているように星乃珈琲といったマルチブランド戦略で高級路線志向の店舗を出店しグループとしての売上を確保すべきでしょう。安さを維持しつつ、他ブランドと共同企画を行うことでイメージアップを図ります。例えばミスタードーナッツでは、老舗洋食レストラン「函館・五島軒」とコラボレーションし、「ホット・セイボリーパイ イギリス風カレー」「ホット・セイボリーパイ デミグラスハンバーグ」といった商品を投入しています。ドトールミラノサンド、朝カフェセットなど、その場で簡単な調理を行うことでフードメニューを提供していますが、提供時間が2~3分かかるため、混雑時間帯ではレジ待ちが発生してしまいます。ドーナッツやパイ、スコーンといった作りおきできる商品でコラボレーションしてはどうでしょうか。